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執筆:川守田 拓志、松村 茉莉
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視認性の高いファッションで交通事故防止

視認性の高いファッションで交通事故防止

VisionClub Car Report Vol. 14 夕暮れ時〜夜間の交通事故防止には、歩行者はドライバーから気づかれやすい蛍光色あるいは反射材を身につけると良いとされているが、それらには若干劣るものの、実はその他にも視認性の高い色合いは存在する。 夕方のもっとも交通事故が多い時間帯に自動車がブレーキをかけてから歩行者の1m手前で停止できるような条件を探った結果、白/黄、白/赤、白/黄赤、白/緑など色合いで、5.9cm幅のストライプの服を着ると視認性が高いことがわかった。 これらの色合いは、日常的な服装にも比較的取り入れやすいので、ぜひファッションも楽しみながら交通安全を意識していただきたい。 ちなみに、その次に視認性が高かったのは、白/青、白/赤紫、黒/黄、などの組み合わせである。 参考・抜粋 1) 川守田拓志ら.一般色および蛍光色における色コントラストと視認性,第61回日本産業・労働・交通眼科学会,2019

白内障患者の自動車運転時危険性の無自覚

白内障患者の自動車運転時危険性の無自覚

VisionClub Car Report Vol. 13 加齢白内障は、60代で約7割、70代で約8割、80代以上でほとんどの人が経験するとても身近な病気である。白内障になると、とくに夜間の車の運転中に「眩しさ」や「見えにくさ」を感じる1)。 しかし、そのような症状があっても、運転が難しいことを自覚できず、運転を続けている人は多い。 白内障手術を希望した117名に対する調査では、「運転が難しい・とても難しい」と回答した割合は夜間の運転で約20%、見えにくさにより運転をやめた人は約4%にとどまった2)。 別の調査では、「加齢により補償運転を行なっているが、自身の運転を過大評価する傾向」も確認されているため3)、今後白内障患者に対して危険性を呼びかけていく必要があるだろう。 参考・抜粋 1) 眼科IC支援システムiCeye(東京都眼科医会監修),有限会社ミミル山房,2016 2)川守田拓志ら.白内障眼の自動車運転に関する主観評価と視機能の関係,第57回日本白内障学会総会・第44回水晶体研究会,2018 3) 松浦常夫.高齢ドライバーの安全心理学,東京大学出版会,2017

サイドミラーは進化している

サイドミラーは進化している

VisionClub Car Report Vol. 12 車のサイドミラーが電子ディスプレイに変わるかもしれない。 通常の光学ミラーの代わりに小型カメラを置き、その映像を車内に設置された電子ディスプレイで見られるようにするというものだ。 これにより得られるメリットは主に2つある。 一つは、夜間時や雨天時などの見えにくくなっている視環境を大きく改善すること。 もう一つは、サイドミラーやピラー(車を支える柱)による死角の問題を改善することだ。 より視認性が高い車内条件が確保できることで、交通事故の減少につながることを期待したい。 ちなみに、バックミラーのディスプレイ化は、すでに日産自動車が液晶ディスプレイと通常の光学ミラーとを切り替えられる「スマート・ルームミラー」というものを開発している。

眼瞼下垂は信号の見落としにつながる

眼瞼下垂は信号の見落としにつながる

VisionClub Car Report Vol. 11 まぶたが下がってくる眼の病気「眼瞼下垂」は、上方視野を狭くし、運転中に信号を見落とす原因になる。 眼瞼下垂は、加齢やハードコンタクトレンズの長期使用、神経に問題がある場合に起こりうる。 正常な視野では、上方は60度程度見えるが、眼瞼下垂があると20度まで低下する。 この場合、13.7mより近づくと、高さ5.0mの位置にある信号が消えてしまう計算になり、注意しなければ信号を見落としてしまうかもしれない。 このように、様々な眼の病気が間接的に交通事故の増加を導いている可能性がある。 参考文献 1) 加茂純子ら.英国の運転免許の視野基準をそのまま日本に取り入れることができるか? 眼瞼挙上術と視野の関係から推察,あたらしい眼科 25,891-894,2008

緑内障の交通事故のリスクは約6.6倍

緑内障の交通事故のリスクは約6.6倍

VisionClub Car Report Vol. 10 緑内障になると視野が障害されるため、運転中に歩行者などの危険対象の見落としにつながる。 緑内障の交通事故のリスクは、約6.6倍。40歳以上の日本人における緑内障有病率は5.0%、つまり20人に1人が緑内障患者であると報告されている。 緑内障は、眼と脳をつなぐ視神経と、人が見える範囲である視野に変化をきたす疾患。眼の中に満たされている「房水」の循環に異変が起こり、眼圧を一定に保てなくなったときに神経がダメージを受け、視野が障害されてしまうのが一般的な症状だ。 現段階では、一度緑内障によって障害された視野は元に戻らない。よって、早期発見と早期治療によって進行を遅らせることが大切だ。 参考文献 1) 日本緑内障学会,日本緑内障学会多治見免学調査報告書,2012 2) S.A Hayme et al.Risk of falls and motor vehicle collisions in glaucoma. Investigative ophthalmology & visual science 48,1149-1155,20

なぜ見晴らしのいい交差点で事故が起こるのか

なぜ見晴らしのいい交差点で事故が起こるのか

VisionClub Car Report Vol. 9 見晴らしのいい田園地帯の交差点で必発する交通事故。 一見不思議な現象に感じるが、これは人の視覚の特性により引き起こされる。 人の周辺視野は、視力が低く、動きがないものに対して認識が弱まる。 2台の自動車が交差点に向かって走行し、45度の位置に互いの車両が映る場合、車同士が交差点に近づいても常に同じ位置に相手車両が映るため、存在に気づけないことがある。 これを、コリジョンコース(そのまま走行していると衝突してしまうコース)という。 Hondaセーフティナビ(本田技研工業社)というシミュレーターを用いた実験によると、予想を大幅に上回り、50名のうち7名で事故が起こった。しかし、別の対象者には「交差点で左右を確認してください」という単純な教示をかけただけで、事故が1件もなくなった。知ることの重要性をあらためて認識させられる。 参考文献 1)安藤有紀,古荘善子,松島実奈,渡辺あかね,川守田拓志.北里大学医療衛生学部視覚機能療法学卒業研究,2016

都市部の交差点で頻発する事故

都市部の交差点で頻発する事故

VisionClub Car Report Vol. 8 都市部の交差点では、ドライバーは低速で進んでいることが多いにもかかわらず、歩行者や車両との接触事故が後を絶えない。 目の奥に危険対象が映っているはずなのに、事故はどうして起こるのか。 人は、高いコントラスト(明暗度)や明るいもの、輪郭、人の顔などの視覚的要素に注意が向きやすい。都市部のような混雑状況ほど、中心で見ているものに複雑な処理が要求されるほど、周囲の情報処理を弱めてしまい、有効視野が狭くなって事故につながる。 ドライバーは、都市部の交差点では必ず速度を落とし、周囲に注意を配ること。 歩行者は、ドライバーから気づかれていないかもしれないと疑って歩くことが大切だ。 参考文献 1) T.Miura. Visual search in intersections - An underlying mechanism - International Association of Traffic and Safety Sciences Research 16, 42-49, 1992

白内障は人工眼内レンズで改善される

白内障は人工眼内レンズで改善される

VisionClub Car Report Vol. 7 白内障になった人は、なっていない人に比べて交通事故のリスクが約2.5倍であると米国の研究で報告されている。 白内障により視覚能力と運転能力が低下した場合の改善策のひとつは、手術で新しい人工眼内レンズを挿入することだ。運転時だけでなく、歩行時の転倒リスクの減少や、認識機能障害が改善することも報告されている。 手術をしない場合は、運転の際に白内障と羞明防止のサングラスを着用することで、リスクを軽減できるので、ぜひ検討していただきたい。 参考文献 1) Owsley C et al. Older drivers and cataract: driving habits and crash risk, J Gerontol A Biol Sci Med Sci 54, 203-211, 1999

自動運転への期待

自動運転への期待

VisionClub Car Report Vol. 6 危険認知があと1秒速ければ、90%の交通事故を回避できるといわれている。 しかし現実には人の視覚機能や運動能力には限界があり、交通事故を減らすのは困難だ。 現在の自動運転の技術では、交差点における危険予測力は人の方が優れるとされる。しかしカメラやコンピューターの性能がさらに向上すると人の眼ではとても敵わない。 自動運転により速く危険対象を認識できれば、交通事故を大幅に減らせる可能性がある。将来は視覚障害者もドライバーとして車に乗れるようになるかもしれない。 参考文献 1) Enke K.Possibilities for improving safety within the driver vehicle environment control loop,7th International Technical Conference on Experimental Safety Vehicles Proceedings 789,1979 2) 保坂明夫ら.自動運転 システム構成と要素技術,森北出版,2016

目の順応性と落とし穴

目の順応性と落とし穴

VisionClub Car Report Vol. 5 目は、環境に順応するという素晴らしい機能を有している。 「明順応」といわれる明るい環境への慣れと、「暗順応」といわれる暗い環境への慣れである。 この目の順応性は、運転において落とし穴にもなる。見えた気になってしまい、夕方や夜間で視覚機能の低下に気づかず、交通事故につながってしまう。 写真のように、昼間野外からトンネル内を見ると真っ暗に見える「ブラックホール現象」や、トンネル内で出口付近を見ると真っ白に見える「ホワイトホール現象」も、目の順応性によって起こる。 目の順応によって、運転中に「見えにくい」と感じる瞬間があるが、トンネルの出入り口付近での過度な減速は、事故のリスク上昇につながったり、渋滞を引き起こしたりする可能性があるので注意が必要だ。 参考文献 1) 成定康平. トンネル照明, 照明学会誌67, 210-217, 1983

白内障患者の運転のリスク

白内障患者の運転のリスク

VisionClub Car Report Vol. 4 白内障は、運転能力に悪影響を及ぼす。 対向車のヘッドライトがまぶしく見えたり、歩行者がぼやけて見えたりする。 また、動体視力にも影響があることも確認されている。 グラフは、健常眼と軽度白内障眼の動体視力を示している。 白内障眼は、静止視力において健常眼とそれほど差がないにもかかわらず、速度が上昇すると視力が低下する様子が確認できる。 視力が良好であっても、要注意。 車を運転し始めたとたんに、まわりが見えづらくなってしまう。 参考文献 1) Higgins KE et al. Predicting components of closed road driving performance from vision tests, Optom Vis Sci 82, 647-656, 2005 2) 清水公也. 白内障手術の変遷と今後, 第63回日本眼科医会生涯教育講座 白内障のすべて, 2012

夕方は意外に見えていない

夕方は意外に見えていない

VisionClub Car Report Vol. 3 夕方は意外に見えていない。 交通事故分析センターによると16時から18時は交通事故の総件数が多い。これは、単に交通量が多くなる時間帯ということだけでない。9月から1月にかけて、17時台の事故が多くなる。これは、交通量に加えて、夕方が暗くなりやすく、視機能が低下していることも影響している可能性が高い。 夕方の明るさ(照度)は、昼と比べると1,000~10,000分の1まで大きく減少する。私たちの視力は、昼間1.0の人でも夕方の明るさでは1~2段階程度悪化する。コントラスト(明暗の対比)が低い視力では、0.3程度まで低下してしまう。これは、高い視力の維持に必要な錐体細胞の働きが悪くなることや、眼に入る光がきれいに集まらず(収差)眼の奥に映る像が悪くなることによる。その他にも色覚、立体視、動体視力も悪くなる。 たちが悪いことに私たちの眼は、明るさに慣れるようにできているので、しっかり見えているものと思い込んでいる。 早期ライト点灯、反射材着用、啓発、ヘッドライト性能、道路照明、多方面からの対策が必要である。

夕方・夜間に見られやすくする方法

夕方・夜間に見られやすくする方法

VisionClub Car Report Vol. 2 夕方に見られやすくする方法。 人の視線は、明るいもの、コントラスト(白黒の対比)が高いもの、大きいもの、動くもの、点滅もの、人の顔、に向きやすい。 写真は、日没30分前である。上の写真は、早期ライト点灯あり、下は点灯無しである。線で囲まれた部分は、見られやすさの度合いを示している(スリーエム社のVASを使用して解析)。 早期ライト点灯、白い服、白線が見られやすいことがわかる。 もったいない、周りは付けていないと言わずに、見るため、見られるための早期ライト点灯を。 夕方歩くときには、白い服や反射材などで明るく。 消えかかった白線に補修を。 ご協力:おもいやりライト、JAVISA

高速走行時の視野は狭くなる

高速走行時の視野は狭くなる

VisionClub Car Report Vol. 1 高速走行時の視野は狭くなる。 人の視野は、片目で鼻側と上側が60度、下側が70度、耳側が90~100度である。つまり、両目だと180~200度であることがわかる。 これが高速走行時には狭くなる。時速40 kmで約100度、時速130 kmでは約30度になるとされる。 この原因のひとつは、周辺視野の情報がより速く流れてしまうことによる。写真の矢印は 周辺の映像の流れを示している(下は、時速40 kmの映像を倍速処理にて解析)。速度の増加により周辺視野の映像がより速く流れることがわかる。 私たちの眼は高速走行に対応するようにできていない。速度の出しすぎにご注意を。 ご協力:株式会社ディテクト 参考文献 1. OECD, Speed Management, 1-22, 2006

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